丸善の卓球場に『こんばんわ』と言って入って行くと、梅澤さんは先に来ていた。『梅澤さんが35歳の時、「今からでも東大に入れますか」と聞いたのを覚えていますか』と聞いてみた。『忘れた』と梅澤さんは言った。『方法はありますけど』と言うと、『もう年だから無理。試合のことは、2ヶ月も前になるので、忘れてしまっていると思っていた』と言った。『僕が電話をしたのは12月です』と言うと、『そうだった』と言った。

『2ヶ月も前になるので、忘れてしまっていると思っていた』と言ったのは、梅澤さんは正直者なので、自分が忘れていたことを何気に伝えたのだ。僕の能力が低下したので、対戦の準備をする必要がなかったのも忘れた原因の1つだろう。しかし、『2ヶ月も前になるので』と言ったのはショックだった。明らかに記憶力が低下している。梅澤さんは記憶力がいい方なので、一般の日本人はもっとひどいに違いないと思った。経絡によるというよりは、神経伝達物質と似た構造を一部に持つウイルスによって引き起こされた自己免疫疾患の可能性が高い。『試合のことは、2ヶ月も前になるので、忘れてしまっていると思っていた』と言ったことから、梅澤さんは皆がもっとひどい状態なので、自分が忘れっぽくなっていることは気にしていないと思われた。忘れっぽい人が極めて多いので、こういう表現が自然と口から出るのだろう。

試合の前に、『自分の現在の実力が知りたいので、全セット0で勝つように頑張ってもらいたいのですが』とお願いすると、『いつも0で抑えようとしています』という返事が返ってきた。

今回は、梅澤さんがフォア前サーブの重要性を繰り返し言ったので、言われた通りフォア前サーブの練習を毎日し、ずっと封印してきたカット系のサーブの練習もした。試合を始めた頃、梅澤さんが『切れている』と言ったカット系のサーブを改良して毎日練習した。

動体視力が低下しているので、カット系のサーブにどの程度の威力があるのか知りたかった。梅澤さんがレシーブミスをするほど威力があるのであれば、カット系のサーブを主体とした卓球を考えなければならない。

結果としては、サービスエースも取れたので、0で落とすセットはなかった。セットを追うごとに得点も増え、3セット目は5本取れた。梅澤さんは極めて残念そうだった。ど真ん中のエンドライン近くに着地するサイドスピンがかかったカット系のサーブに、2度も力負けしたのが残念だったのだ。『あれだけ切れていると返せない』と言った。僕も内心残念だった。脳の機能が心虚で抑えられているため、フォアで打ったボールが入らないのだ。脳の機能が高いときは、フォアもバックもあたれば入ったのに。

今までは、梅澤さんに卓球の技術について聞くことは避けて来た。梅澤さんの必死さが肌で感じられるので、自分を利するような質問はできなかったのだ。今はそういう緊張感がないので、聞きたい質問があった。カット系の切れるサーブは空中で曲がる。ところが梅澤さんのサーブは、空中で螺旋状に回転するのだ。試合中に『梅澤さんと同じように、サーブが空中で螺旋状に回転する選手っているんですか』と聞いてみた。『いっぱいいます』という返事が返ってきた。『そんなはずはない』と思ったので、『誰が螺旋状に回転するサーブを打つことができるのですか』と聞いてみた。『吉村真晴』と言う答えが返ってきた。家に帰って、吉村真晴の動画を検索すると、わずかにサーブが螺旋状に回転していた。

※2月、3月は梅澤さんの仕事が忙しいので、次の試合は4月以降になります。